約 489,301 件
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/290.html
人里からいくらか離れた月光も届かぬ暗い森の中で、誰かが何かに追われていた。 逃げるは人間。フリルのあしらわれた黒い服はあちこち裂け、箒を飛ばしてはいるが息は上がり、手元も怪しい、疲労困憊であることは瞭然である。体の起伏こそ乏しいが服装と体格から見るにどうやら女性のようだ。 追うは妖怪。背骨を丸め、はじけるように木から木へ飛ぶ。その口からは食糧を目の前にした興奮からか涎がボタボタと垂れる。しなやかな動きと眼光は狩りをする肉食獣のそれである。 彼女の速さは――特に逃げ足の速さは――幻想郷の人間の中ではトップクラスであることは間違いない。人間以外を含めても彼女に追いつける者がどれほどいるか……。しかし今回は場所と相手が悪かった。追う妖怪は木の幹から幹へ、枝から枝へと全身のバネをフル活用して逃亡者をも上回る速度で追い上げていく。 幸いにもまだ多少の距離がある、高度を上げられれば振り切るのは容易い。しかし頭上には茂る枝葉、もしほんの少し引っかかってしまえば高度を上げきる前に血抜きが済まされてしまうだろう。もちろん彼女の体から、だ。その可能性を考えるとそれは幾分分の悪い賭けに思われた。 それにそれではいけない理由もあった。 「ええい、このままじゃじり貧だ」 焦れたように独り言をもらしながら彼女は無意識に符と固形燃料を取り出し、悪態をつきながら取り出したばかりの符をしまう。 そして眼前に迫りくる妖怪にしっかと愛用するミニ八卦炉を構え、吠える。 「一撃だ……行くぜ! マスタァーッ! スパァァァーク!!」 溢れる光の奔流と多大な熱量が、彼女の信条と弛まず自身を研鑽し続けた成果が、 愛しい人の作った道具が、まさに喉笛に食いつかんとしていた妖怪を焼き払う。 その光と轟音で森近霖之助は目を覚ました。 「な、なんだ?」 霖之助が音の発生源があると思われる方角の窓を覗き込むと、魔理沙の姿と元木々があった。元木々と言うのは字の通りである、昨晩までは立派な雑木が立ち並んでいたはずなのだが、今は立派な焼け野原に様変わりしていた。 その焼け野原の端にいた少女がさも何事もなかったかのように声を上げる。 「おはよう香霖、早い朝だな」 「おはよう魔理沙。こんな時間に起きているなんて珍しいじゃないか」 「今日はちょっとよう――」 「ところでこれはなんだい? 山火事か、それともクマでも暴れたのか」 魔理沙の言葉を遮って聞くのはもちろん眼前に広がる惨事のことである。霖之助も何が起きたのか察しはついているが言い訳を聞く気になった。もちろん、彼女がありのままを言うわけがないが。 「ああ、クマだぜ」 「それはもしかして小柄で金黒白の体毛のとびっきり凶暴なやつじゃなかったかい?」 「小柄で金黒白の体毛のとびっきりかわいらしいやつだったぜ?」 「はあ……、やあ森のクマさん。こんなところで立ち話もなんだ、上がって茶でもいかがだい」 霖之助はやれやれとばかりに肩をすくめた。 柔らかい朝の陽光が射す香霖堂、表の札が商い中に変わっただけでなんの変わりもない。物が雑然と並び、当然客の姿もない。魔理沙が一息ついたのを確認すると霖之助がおもむろに切り出した。 「で、本当は何があったんだい? 僕はあんなに派手なモーニングコールを頼んだ覚えはないし、人様の安眠を無為に妨げるほどお子様じゃないと信じたいんだけど」 「何ってさっき言った通りだぜ?」 魔理沙は真面目な質問であることを解しつつはぐらかすようにわざと飄々と返す。暗に「深くは聞くな」と。 こんな返しをされては霖之助も無理強いはできない。 「何もないのに服がボロボロになったりしない。そうだ、服を脱いでくれ」 「おお? 今日の香霖はやけに大胆だな」 「僕は君が物心着く前から知ってる、おしめを替えたこともある。男物だから大きいだろうが襦袢は箪笥から適当に。繕うだけさ」 奥にある自らの居住区を指しながらまた溜息をつく。 「おいおい、ドロワーズを穿いたまま襦袢が着られるか。それともあれか? 脱いでほしいのか?」 「好きにしてくれ。それにしても今日はやけに絡むじゃないか、そんな歳じゃないだろう?」 「そういうお年頃なんだぜー」 魔理沙はくすくす笑いながら店の奥へと消えていった。 霖之助は衣ずれが漏れ聞こえる戸の前に脱ぎ捨てられた衣類を拾い集めるついでに、裸体かそれに近い姿の魔理沙を覗き込む……わけもなく店番に戻った。 タイミングを計ったようにふわりと頭に乗せられた生暖かい白いなにかについては、熟考の末気付かないことにした。 繕いが終わるまで誰ひとり来訪者はなかったが、それは霖之助にとっては幸せなことだった。もしだれかひとりにでも見られていたら明日にでも里に最も近い天狗の誰かさんによって記事にされているだろう。 見出しはこうだ「記者はみた! 古道具屋店主のアブナイ趣味!」 この誰かさんでなくても見目若い男性店主が頭にドロワーズを乗せながら女性ものの服を繕っていたら変に思って当然だが。 「破れが大きい箇所は当て布をしておいた。初めのうちはそこだけ浮いて不格好だが洗濯を重ねればだいたい他と同じくらいの色に落ち着くはずさ」 「さすがは香霖だな、いい嫁さんになれるぜ」 「僕は男だ」 「私が嫁にもらってやってもいいぜ」 むくれていた魔理沙も綺麗に直った服を見て機嫌を直したようだ。霖之助は魔理沙がなぜむくれていたのかわ からなかったことにして新たに茶を淹れなおす。普通こんなことをされれば気づいても良さそうなのだが、兄貴分をからかっているぐらいにしか考えていないあたり霖之助らしいわけだが。 この二人の間にそうそう適した世間話があるわけもなく、やがて各々自分の指定席で本を読みだしてしまった。 当然ながら客はいない。紙の擦れる音の合間には心音まで聞こえてきそうなほど静かである。 その静けさの中、音を思い出したように声が響く。 「そうだ。魔理沙、最近何か変わったことはないかい?」 「別に普通だぜ? うちもここも閑古鳥が鳴きっぱなし、変わりない」 笑えないねと微笑みを浮かべ、少しの思案の後にずばりと。 「そうだな……例えば妖怪について」 本題を切り出した。 魔理沙の肩がぴくりと動いたのを霖之助は見逃さなかった。 彼のいつになく真剣な眼差しを受けて魔理沙はホールドアップ。情報料は? という軽口も無視されしぶしぶ 口を割る。 「いつのことだか覚えてないが、すこし変な妖怪がいるのは確かだぜ。いや、変な妖怪は別に珍しくないな、様子がおかしい妖怪だ。普段は別段凶暴でもないやつが暴れまわっていたり、賢いやつが暴れまわっていたり」 「そんな些細なことじゃな――」 「スペルカードルールを無視して人間を食おうとする妖怪がいたり」 驚きの余りに霖之助の座っていた椅子が倒れる。中腰の体勢のまま彼は魔理沙の服を見つめ、小さく口の中だけでなるほど、と呟いた。 また魔理沙も、私のこともそれくらい鋭ければ楽なのにな、と。 「ふむ、それは妙な話だね。異変と言っていいだろう、霊夢とどちらが先に解決するのか見物だよ」 霖之助は努めて軽く言いながら椅子を正して座りなおす。魔理沙としてはこの話はできればしたくなかった。 当然したくなかった。 西日が眩しい店内に変わらずふたりだけ、本を読むふりをする魔理沙と同じページを開いたまま虚空を見つめる霖之助。 魔理沙はこれまでにない心地の悪い沈黙の中にいた。その中で目線は本に向けたまま軽く、本当に軽く、いつもの他愛ない話をするように口を開いた。 「ああそうだ香霖。今朝用事があって来たって言ったよな」 無言のままぼんやりとしていた霖之助の焦点が魔理沙に合わせられる。 「それなんだが、香霖。えぇっと……け、結婚って、どう思う?」 西日で染まる魔理沙の頬を眺めていたかと思うと、少しずつ普段の霖之助の表情に戻り始めた。 「昔からの知り合いが何人か祝言をあげているけど、いいものだと思うよ。彼らは皆仲良く幸せにしているしね。 外の世界では最近そうじゃないのも増えているらしいけど」 「それなら話は早いぜ」 霖之助の言葉を聞いてさっきまでの暗い表情はどこへやら、目を輝かせて彼を見返す。 魔理沙の反応を見て完全に普段の表情に戻り、気圧されるように彼女から視線を外す。 「ちょっと結婚してみないか?」 「突然何を言い出すのかと思えば……、いい見合の話でもあるのかい?」 「ああ、見合だぜ」 「どこの誰だい」 「今見合ってるぜ」 逸らしていた眼をきょとんと魔理沙と合わせ、急ににがにがしい口調になる。 「冗談は自分の歳を考えて選ぶものだよ」 とんでもなく外れたジョークと受け取った霖之助は、どこか安堵したかのように大きく息を吐く。あるいは自分を気遣ってくれたのか。 「こんな冗談言う歳じゃないぜ」 腕を振り回して抗議する様を見て、霖之助は本日何回目になるかもわからないほど行った動作をさらにもういちカウント増やす。溜息。 「じゃあこう聞こう。もし仮に本気だったとして、それにどんなメリットがあるんだい?」 無粋にもほどがあるが残念ながら霖之助は大真面目のようだ、魔理沙も苦労するはずである。当の本人に悪気が一切ないのがより事態を深刻にしていた。 「ええと、いつも一緒にいられる」 「今だってその気になれば容易いことだろう」 予想だにしていなかった展開に戸惑う少女。 即座に切り捨てる青年。 「もっと深い間柄に……」 「もう浅い間柄でもないだろう」 うろたえる乙女。 切り捨てる外道。 「きっと赤ん坊はかわいいぜ」 「僕より先に老人になる赤子はできれば遠慮したいね」 魔理沙。 霖之助。 黙ってしまった魔理沙を尻目に霖之助棚にはたきをかけ始めた。客はない。店内に軽く小さい音がやけに大きく響く。 目を刺す強い光が柔らかいオレンジに変わるころ、魔理沙に背を向けたまま。 「それはただの約束だ、突き詰めて言えばただの約束なんだ」 霖之助とごく親しい関係でなければ平素のものととってしまいそうな声色だった。彼のこれまでの人生は外見よりもほんのちょっとだけ長く、わずかに変化に富んでいて、若干スリリングだった。ゆえに腹芸もその逆もある程度は心得ている。 「だけどそれは男女なら誰でもできる。僕らには少しばかり退屈で窮屈なものだ。だから魔理沙、僕らは僕らにしかできない約束をしようじゃないか」 彼女はなんの反応もしない、反応はしないが少女の視線は青年に注がれている。不機嫌であることを隠そうともしない見事な仏頂面と不機嫌オーラだ。これをイエスととる人間は滅多にいないだろう、しかしこの場にはいた。 「さっきの様子のおかしい妖怪がいるという話だが、一部の妖怪がなんらかの影響を受けて昔の姿に戻っている という結論に行き着いた。原因についてはまだなんとも言えないけどね。それで、だ」 気づけばはたきを持つ手が力なく垂れ下がっている。 「僕の体に妖怪の血が流れてるというのは今さら言うまでもないね。もしも僕の様子がおかしくなったら、そのときは君の手で始末してほしい」 「ここ最近でいっとうつまらない冗談だぜ」 霖之助の広くはない背中を睨みつけ、即答する。 彼は殺気にも似たものを一身に浴びながらも口調を繕ったまま変えない。むしろ苦笑いさえ浮かべていた。 「こんな冗談を言う歳じゃないんだけどね」 霖之助は椅子に戻りしっかりと魔理沙を見据える。魔理沙の抗議を受けとめる。 「とは言っても納得はできないか、じゃあ簡単に説明しよう。なに、楽しい話じゃないからすぐ終わらせるよ」 彼は微笑を崩さない。 「知っての通り僕は半分妖怪だからね、最近の変化について真っ先に妖怪のことを聞いたのはその半分の調子が最近とてもよくてね。こんなのは幾十年ぶりなんだ。そしたら案の定だった、これはよろしくない」 霖之助は笑う。魔理沙を見つめ笑う。 「それとこれまでの人生のうちに妖怪の欲求が一度もなかったかと問われれば肯定はしづらい。昔は物騒だった んからね、幸いその欲求はもう半分の血のおかげで満たされたことはないけど。本当に嫌な記憶だ」 霖之助は笑う。過去を思い出し笑う。 「荒れてた時代ですら抑えるのに苦労したっていうのに平和に慣れてしまってからその衝動が来たら抑えられるかわからない、というより抑えられないだろう。おそらく、二度と今の僕に戻ることもないと思う」 霖之助は笑う。不幸せな未来を笑う。 「まあそれが来るのは君がいなくなった後かもしれないし、来ないかもしれない」 ふと霖之助の顔から笑顔が消えた。机に肘を付き指を組んだ手で口元を隠すように、少しでも表情を隠そうとする。 「正直なところを言うとね……怖いんだ。もしそんなことになったらと考えると震えが止まらないよ。死ぬことなんかが怖いわけじゃない。もしかしたら僕が知人や親しい人を殺してしまうかもしれない、人喰いの化け物として見も知らぬ他人に退治にされるかもしれない、そのとき幽かに人間の意識が残っているかもしれないと考えると……。だから魔理沙、もしそんなことになってしまったら力を持っていてかつ特別な君に片を付けてもらいたい」 言葉通りよく見れば彼は小さく震えている。カタカタと机が鳴っている。 長く生きているはずの青年は幼子のように恐怖に震えている。 その怯えが無理やり止められた。いつの間にか霖之助の後ろに回り込んでいた魔理沙がその背中を抱きかかえている。 「お前は馬鹿だな、ひとりで勝手に悪い方に悪い方に考えて。私がたまたまおかしい妖怪に出くわしただけかもしれないだろ?」 そんな馬鹿を好きになるやつがかわいそうだぜ。 「いいぜ、約束しよう。万が一香霖がおかしくなったら私がなんとかしてやるぜ」 青年は、小さな身体を精一杯広げて自分を抱きすくめる少女の手の甲を握り、何かを呟く。その声は魔理沙以外が聞くには小さすぎた。 「なあ、やっぱり結婚しないか? その方が何かあったとき対処しやすいぜ」 「僕は魔理沙が好きだけど、今のそれは愛じゃないんだ。それにさっきも言ったけど好きな人だけならまだしも自分の子供が天寿を全うする様を見届けるのはごめんだ」 精神的に参っていても霖之助は霖之助だった。魔理沙もそんな霖之助だからこそ好きになったので答えはなんとなしにはわかっていたが。 「それにしても本当に客が来ないな。よくこんな店にずっと籠もってられるぜ」 「飽きないとはうまいことを言ったものだ」 「お前は牛だったのか」 「少し時間を持て余してるだけさ」 日暮れの香霖堂に笑い声が響く。店内にはふたりもいる、賑やかなことこの上ない。 折れた木々の隙間から月光が差し込む森の中、誰かのすすり泣きが響く。 泣いているのはモノトーンカラーの衣装を身に纏った魔法使い、彼女の名前は霧雨魔理沙。魔理沙は誰かの身体を背中からきつく抱きしめていた。 仰向けの姿勢で腰から上を魔理沙に抱きかかえられているのは、さきほどまで魔理沙と物騒な追いかけっこを繰り広げていた妖怪――もとい、森近霖之助。それがうめきを上がる。 「まだ息があったのか」 苦虫を噛み潰したかのような顔でミニ八卦炉を取り出し―― 「いやぁ……魔理沙のモーニングコールは相変わらず派手だな」 二度と聞くことはないはずだった想い人の声が耳朶に触れる。 「しかし妖怪化した僕を一撃でこんな状態にするとは、努力は欠かさなかったようだね。感心だ」 「しゃ、喋るな! 息さえあればどうにか命を繋げることはできる!」 膝枕の姿勢で青年の顔を見下ろしている魔理沙、彼女の悲痛な叫びと比べて当の本人は至って暢気なものだ。 「そのことなんだけど、僕はひとつ確信してるんだ……。どんなに急いでも森を抜ける前に僕は終わる。逆にそれほどのダメージだから戻れた、とも言えるね」 実際霖之助のダメージは魔理沙から見ても深刻だった。傷は全身にあるが特にひどいのは直撃した腹で、大きく肉が削げ落ち、中身も少しとは言えない量が飛散している。皮肉なことに今言葉を話せているのはひとえに妖怪の血のおかげであるのは間違いないだろう。現に魔理沙は既に絶命しているものだと思っていた。 やはりかなり無理をしているのだろう。霖之助から急に生気が感じられなくなっていく。 「魔理、沙、ありがとう。ごめん」 いつか約束を交わした日に呟いた言葉をつっかえつっかえもう一度伝える。 青年はもう長くない。あと何言残せるだろうか、何を遺すべきだろうか。 「香霖、香霖……!」 手を握り泣き続ける魔理沙、彼女の顔は涙やら鼻水やらでもう目も当てられない。 「君に、そんな顔をさせてしま、うなんて、僕はダメな男だな。泣くのは、やめておくれ、魔理沙。かわいい顔がしわくちゃじゃないか」 手を強く握り返し、誰かに対してシニカルな微笑みを浮かべ、霖之助は、森近霖之助として息絶えた。 絶命を確認すると魔理沙は一瞬目を大きく見開き、乾いた笑いをあげた。 「はは……まさか今際の際まで笑って皮肉とは恐れいったぜ。は、ははは……ははははは……」 深い夜、深い森の中。老いた魔法使いの激しい慟哭が響き渡る。 握られた青年と老女の左手には輝く揃いの指輪。誓約の指輪は昔交わされた、とある約束を誇っていた。
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/130.html
―――僕の人生は人よりずっと長い。 だから、僕には人生が短いという感覚は理解できないだろうね。 きっと死の間際には、よく生きたと満足して笑って見せるよ――― 【英雄伝】 いつもどおりの日常を過ごしていたはずが、気が付けば手足は満足に動かず、 何日眠らなくても疲れを知らなかった肉体は、たった数時間の読書にすら倦怠感を主張するようになった。 衰えたのは肉体ばかりではない。 いつしか未来の自分に思いを馳せることはなくなり、過去の思い出にばかり浸る自分がいた。 新しい物を求めるよりも、今ある物で満足することを覚えた。 そうして悟った。もう、自分は長くないのだ、と。 幻想郷にある魔法の森。 その入り口に存在する店、香霖堂の店主こと森近霖之助は、老いた自分を振り返っていた。 すでに何年生きたのか覚えていない。 体力はすっかり落ちきってしまい、無縁塚への仕入れはもう何年も前から行っていない。 いや、すでに一日の大半を布団か椅子の上で過ごす毎日だ。 見た目の姿も随分と変わった。 もともと白かった髪は、色こそ変わらずとも艶を失い、顔には多くのしわが刻まれている。 だが、それらは決して不快感を与えるものではない。 重ねてきた月日が性格を丸め、その性格を反映した柔和な笑顔。 その笑顔を見て、かつて彼が仏頂面とからかわれていたことを信じるものはいないだろう。 そう、かつては霊夢や魔理沙にからかわれてばかりだった。 「……最近は昔のことを思い出してばかりだな」 自嘲気味の笑みを浮かべる。思えば随分生きたものだ。 結局、外の世界を目にすることは適わなかったが、自分の人生には概ね満足している。 外の世界のほかに心残りといえば、自分の集めた品の行方くらいのものだ。 特に草薙の剣と、大昔に無縁塚で拾い上げた彼の背丈ほどもある古時計。 死後の世界にそれらを持っていけるわけではないのに、と苦笑する。 「調子はどうだ?霖之助」 「慧音か」 霖之助が床に伏せるようになると、友人たちはそれまで以上に香霖堂を訪れるようになった。 今では当番制で家事や霖之助の生活を手伝ってくれている。 自分はどうやら自覚していた以上に彼女たちに好かれていたらしい。 「どうにも、昔のことを思い出してばかりだ。これはいよいよ天に召される時が来たかな?」 「またそんなことを言っているのか……」 半分人間の血が混じっている者の中で、霖之助の寿命が最も短かったらしい。 慧音や妖夢も年は取ったが、まだまだこれから人生の折り返し地点というところだ。 咲夜、霊夢、早苗、そして人間として生きることを選んだ魔理沙はすでに他界し、今はその子孫たちの時代になっている。 「魔理沙、霊夢、咲夜、早苗、か」 懐かしい名前に、慧音が応じる。 「随分久しぶりに聞いたな。懐かしいものだ」 「ああ。特に、魔理沙と霊夢には迷惑もかけられたが、彼女たちがいなければ、 君を始めとしてこんなに多くの友人を持つことはできなかっただろうね」 思い出話に華が咲く。 楽しい一時だったが、かつての自分はこんなにも過去の話で盛り上がることはなかったと、 霖之助は改めて自らの老いを自覚した。 「それではまた来るからな」 「ああ、楽しみにしている」 霖之助が夕食を済ませて床に就くと、慧音は少しのやり取りを済ませて帰り支度を始めた。 ふぅ、と一息ついて、霖之助はまた思索の海に沈む。 結局、自分はだれかと添い遂げることはなかった。 こんな自分でも、好意を向けてくれた女性は少なくない。 慧音とて、何度も人里で共に暮らそうと言ってくれた。 彼女たちに応えることができなかったのは申し訳ないが、誰かを選んでいれば、その分誰かと疎遠になっていただろう。 そうなれば、今のように多くの友人を持つことはなかったかも知れない。 そう思えば、多くの友人と知り合い、その内面に触れることができたこの人生も、悪くはなかった。 これなら、安らかに死んでいけるだろう。 若いころから、死について考えることが度々あった。 死、四、史、始。 これらは同じ、『し』という読みを持つ。 これは死した者の行く末を暗に示していると言えよう。 肉体は『四』大元素(火、水、土、風)へと分解され、世界の構成要素となる。 残した足跡は歴『史』となり、残された者たちの道しるべとなる。 そして、魂は輪廻の輪をぐるりと回って、また新しい生を『始』めるのだ。 ゆっくりと目を閉じる霖之助。 いつもは眠りが浅くて困るというのに、今日は易々と意識が沈んでいく。 まるで、死に誘われるかのように。 帰り支度を終えた慧音は、次に来る日を思い浮かべつつ、店を出ようとした。 だがその時、ありえないはずの音を聞く。店の古時計が、時間でもないのに音を上げた。 ボーン 振り返ってみるが、今の時刻は18時20分というところ。 ボーン 故障だろうか。霖之助が拾ってきてからというもの、こんなことは一度もなかったが。 ボーン すぐ止むと思っていたその音は、むしろ激しさを増して店内に響き渡る。 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、 何かを訴えるように鳴り続ける時計を呆然と見ていると、かつて霖之助に聞いた話を思い出す。 この時計は、ある人物が生まれたときに送られたもので、その人物が亡くなる瞬間に音を上げた後、壊れて幻想入りしたものだと。 「……まさか」 慧音は部屋に戻り、横になった霖之助に声をかける。 いつもなら例え寝ていても起き上がってくる霖之助が、微動だにしなかった。 時計の音は、まだ止まない。 古時計の音は、届くはずがない場所にいる者の耳にも届いた。 いや、正確には耳に届いたのではない。 頭の中に直接響いたのだ。 最初は疲れているのか、それとも何かの悪戯かと思った彼女たちも、延々と続くその音に聞き覚えがあること、 そしてその音を何処で聞いたのかを思い出し、嫌な予感と共に香霖堂へ向かった。 朦朧とする意識の中で、霖之助はいよいよ自分の死を確信する。 周りには友人たちがいるはずだ。はっきりとはわからないが、声が聞こえたように思う。 しかし、死に向かう霖之助の体は、彼の意識をどんどん皆から遠ざける。 目は周りの様子を写してくれない。死ぬ時には皆の顔を焼き付けておきたかったのに。 耳が音を感じない。皆の声に囲まれて逝きたかったのに。 手足が言うことを聞いてくれない。死の前に、できれば握手の一つでも交わしたかったのに。 口は唸り声すら出そうとしない。皆に感謝の言葉を告げたかったのに。 鼻も利かなくなったようだ。住み慣れた家の香りを感じることすらできなくなった。 残酷なことをしてくれる。 自分に音も光もない孤独の中で死ねというのか。 死ぬ前に済ませておきたかったことは何もできないまま、 こんなに心配してくれている皆になにも伝えられぬまま、最期を迎えるのか。 いや、まだ残っているものがあった。 それは、触覚。 皆が自分に触れているのを感じる。 そして彼の能力は、蝋燭が最後に一際燃え上がるかのごとく、ここに来て進化を遂げた。 『道具の名前と用途がわかる程度の能力』 生命体の名前はわからなかったはずが、今では触れた手から皆の名前が流れ込んでくる。 頬に手を当てているのは紫。 口元で呼吸を確認しているのは慧音。 右手で脈を診ているのは永琳か。 両の肩口に水滴が滴ると思ったら、美鈴と鈴仙が泣いていたのか。 左手を包んでいるのは文の両手。 霖之助の能力はよりいっそう強く燃え上がる。 一人一人の声が肌に届くたび、なんと言っているのかまではわからずとも、それは誰の声だと教えてくれる。 長年付き合ってきた妖怪たちばかりではない。 年老いて穏やかになった彼を慕う人間たちも、わざわざ人里から大勢駆けつけてくれている。 部屋に入りきれないほどの人数が、霖之助に声をかけていた。 それは、本来存在するはずがない光景。 人と妖怪が、いがみ合うこともなく、一つの目的のために一堂に会している。 皆等しく、霖之助の死を悲しんでいた。 一際続いているのは古時計の音だったのか。そうか、君が皆を集めてくれたんだね。 ありがたい。自分なんかの死を、こんなにも大勢で惜しんでくれるとは。 僕は幸せ者だ。心の底からそう思う霖之助だが、困ったことにそのことで心残りができてしまった。 せめて皆に、自分は最期の最期で、幸福に包まれている事を伝えたい。 何もわからぬままに死んでいったのではなく、自分の生と死を見つめた上で受け入れて死んだのだ、と。 頼む、体のどこでもいいから言うことを聞いてくれ。すがるような思いで全身をもう一度確認する。 あった。 どうやら顔の筋肉は、まだ自分に味方してくれるようだ。 せめて、笑顔を残していこう。 よかった。まだ僕にも、できることが残っていてくれた……。 「脈が……止まったわ……」 永琳が霖之助の臨終を告げた。 泣き崩れるもの、 呆然とするもの、 必死に涙をこらえるもの、 反応はそれぞれだったが、誰もが霖之助の死に顔を直視できない。 しかし、そんな中でも誰かが声を上げた。 「……笑ってる」 その言葉を聞き、皆の視線が霖之助の顔に集まる。 脈が止まった瞬間、確かに無表情だったその顔は、いつの間にか笑顔に変わっていた。 そして、慧音の声が響き渡る。 「全く……。 自分が死のうとしているその真際に、私たちを安心させることを考えるとは、お前も本当に変わったものだ。 だが、残念だったな霖之助。お前の作り笑いなど皆お見通しだ。 ……この……大馬鹿者の……お人好し……め……」 慧音の両目から、大粒の涙が溢れ出す。 その視線の先に横たわる霖之助。 その顔に浮かんでいたのは、かつて自らが苦手と公言して憚らなかった営業用の笑顔。 霊夢が、魔理沙が、わざとらしいと揶揄した、ぎこちない『誰かのための笑顔』を、今再び霖之助は浮かべていた。 何時しか、時計の音も消えていた。 蝉がやかましく泣き叫ぶ、夏の日の夕暮れ。森近霖之助の時間は停止した。 そして、1つの物語が阿礼乙女の蔵書に加わる。 物語の題名は、『森近霖之助伝』。 人と妖怪両方の血を引きながらにして、どちらの道を選ぶこともなく、個人としての行き方を貫き、遂には人と妖怪の区別なく多くの友人を作った男の人生を伝える、『英雄伝』。 この物語に新たな一行が加わることは、もう、ない。
https://w.atwiki.jp/kourin_rpg/pages/26.html
素材項目と併せて参照の事。 名前 値段 効果 備考 霖之助の服 - 耐+3 霖之助初期装備 巫女服 - 耐+3 霊夢初期装備 エプロンドレス - 耐+3 魔理沙初期装備 人形師の服 - 耐+3 アリス初期装備 名前 値段 効果 備考 丈夫な服 1500 耐+6 毛玉を5個売却 レザーアーマー 2000 耐+10 巨大ネズミの皮を5個売却 くさりかたびら 3400 耐+13 鉄製の部品を8個売却 唐獅子の半纏 4000 耐+18 蒼い毛玉を6個売却
https://w.atwiki.jp/tohorpg/pages/757.html
[部分編集] 霖之助と愉快な仲間達の紹介ページです。 タイトル 霖之助と愉快な仲間達 作者 幼舐め男氏 サイト キャタピラーの巣窟 ダウンロード pass yukai ツール RPGツクールVX Ace ジャンル RPG 最新ver 誤字修正版(2013/5/22更新) 動作環境 Windows 8/7/Vista/XP/Me/2000 メインキャラ 霖之助、他7名 価格 無料 ストーリー ○月××日、幻想郷は滅ぶ寸前になっていた。 侵略者は弾幕が通用しない謎の生命体。 まったく歯が立たない紫は草薙の剣を持つ霖之助に幻想郷を任せるのであった。 特徴 東方では珍しい原作の男キャラだけを掻き集めたという異色のRPG。 中にはトランプキングのように他ではまず見ないようなキャラまで登場しており、 普段と変わったメンバーでのプレイが可能。 一方でゲーム自体は至って普通のデフォ戦である。 コメント ▼コメント投稿欄へ wikiを隅々まで見て載ってなかった情報や、記述内容の誤りの指摘などを寄せて頂けると助かります。 バグ報告があれば作者のサイトへどうぞ。その際はバージョンを記述しておきましょう。 レスをしたいコメントのトップにあるラジオボタン【◯】をクリックしてから コメントを書き込んで下さい。 そうするとログが流れず、どのコメントへのレスかもすぐに分かるのでやりとりがスムーズに出来ます。 (表示は10件分に設定してますが変更は可能です) ※コメントを書き込む際、以下の点を確認して下さい※ 質問をする場合、一度コメントログやコンテンツに目を通して既に同じ内容が載っていないか確認して下さい。 wikiや攻略情報と関係の無い以下に該当するコメントは、削除対象となります。 雑感・雑談・愚痴 誹謗中傷 プレイ日記 特定キャラでの攻略や低レベル攻略といった縛りプレイ全般 一般常識を逸脱するようなコメント 1 - 名無しさん 2013-07-11 18 38 21 2 - 名無しさん 2014-07-26 14 11 21 具体的にキャラは何が出るんですか?(プレイしろと言われたらそこでお終いですが) - 名無しさん 2014-10-04 21 14 27 プレイしろ - 名無しさん 2014-10-05 13 38 59 ですよね~・・・ - 名無しさん 2014-10-05 20 19 35 タイトル画面に出てる8人全員だけど二人は設定だけのキャラだし一人は超マニアックだからやらねえと多分分からん - 名無しさん 2014-10-06 02 34 32 まぁ一応七人は知ってるんですが、真ん中のトランプみたいなのが分かりませんw - 名無しさん 2014-10-06 18 54 11 確か左からおまけに俺の偏見で書いてます。すいませんw - 名無しさん 2014-10-06 19 13 38 プレイしてて分かったが、間違えてまくってるなww - 名無しさん 2014-10-09 21 28 16 さっきクリアしたが、一時間ほどでクリアできるお手軽な内容だった - 名無しさん 2016-01-21 01 00 53 あと、人里の前のエリアに隠し通路発見w一気に最強になれるアイテムがあったw - 名無しさん 2016-01-21 01 02 23 名前 全てのコメントを見る ▲ページ上部へジャンプ
https://w.atwiki.jp/intelljp/pages/170.html
張作霖元帥の「無賃乗車事件」」("Литерное дело" маршала Чжан Цзолиня) 2003年6月27日付独立軍事評論 ドミトリー・プロホロフ 1920~1930年代の中国におけるソビエト諜報部の活動は、余り研究されていないテーマである。その間、武装白衛移民のプレゼンス、常に変化する政治情勢は、中国をソビエト特務機関の凝視の対象とした。OGPU外国課、労農赤軍情報局及びコミンテルンOMSは、中国で起こっている事件を注意深く追跡しただけではなく、積極的に干渉した。その事例となり得るのは、1928年6月4日の中国「軍閥」奉天派の長、張作霖元帥の暗殺だった。90年代初め、歴史家ドミトリー・ヴォルコゴノフが、レフ・トロツキー暗殺の組織者、ナウム・エイチンゴンについて語りつつ、張作霖と関連したエピソードが存在することを伝えるまで、長い間、彼の除去は日本特務機関によるものとされてきた。 青年時代、元帥は、満州で馬賊と呼ばれた胡匪だった。時と共に匪賊の1つの統率者となった張作霖は、1904~1905年の日露戦争時、日本人側で戦い、ロシア軍後方に対する襲撃のために、胡匪を利用した。戦後、張作霖(特に、未来の首相田中義一の庇護のおかげで)は、自分の部隊と共に中国正規軍に採用されて、急激な出世を遂げ、将官の階級と師団長職にまで栄達した。 1911年の清朝打倒は、張作霖の立場を更に大きく強化し、1916年、彼は、日本の秘密支援の下、満州を中国から独立したものと宣言しようと試みた。北京は、北の豊かな州を失うのを恐れて、張作霖を奉天督軍兼省長と東三省巡閲使に任命した。しかし、1917年、張作霖は、中央政府に従うのを最終的に止め、満州の事実上の統治者となったことにより、いわゆる「省軍閥」に変わった。 中国の「省軍閥」という独特な現象は、配置された部隊を指揮する督軍が、軍と文民権力を兼任するシステムを特徴とした。中央政府の弱体化の条件の下、督軍は、時代遅れの組織と過酷な規律を有し、装備は劣悪であるが、他の督軍に対する闘争には全く適した傭兵に頼りつつ、急速に自領土の絶対権力を有する支配者となった。1918年までに、中国では、国内で権力を要求するいくつかの主要集団が形成された。北部には張作霖を首班とする奉天派、段祺瑞を首班とする安徽派、中央には曹錕と呉佩孚を首班とする直隷派、南部では国民党党首孫文が主要な役割を演じていた。 張作霖勝利のチャンスは、かなり高かった。第1に、彼は日本の支援を受けていた。第2に、満州には、満州で最も発達した鉄道網があり、主として日本人が建設した重工業企業の大部分が存在し、第3に、彼はリーダーに必要な資質を有していた。元帥にいかなる共感も感じなかったロシア移民P.バラクシンは、彼をこう評した。 「天賦の知性、巧妙さ、政治的機敏さの外、この表現を当時の中国の典型的統治者に適用できるとすれば、彼には多くの個人的魅力があった。張作霖は、常に自分に利益をもたらし、自分の権力を強化することを意図して、自分の政治的賭けを行った」。 20年代初め、張作霖は、孫文と同盟を締結し、直隷派に対する戦争を開始した。この戦争での敗北と国際舞台における日本の脆弱さは、張作霖をして、軍事・経済ポテンシャルの増強と相対的な経済的独立の達成を目的とした「満州再編」のスローガンを提出させた。彼の満州の経済発展プログラムは、北東部の州の自然資源の積極的利用、空白地の開拓、工業と輸送機関の発展、教育システムの改善を規定した。張作霖と1923年2月に広東に戻った孫文は、新たな同盟を模索し始めた。同盟者となり得たのは、ソビエト連邦であり、1923年春、孫文は、蒋介石を団長とする代表団をモスクワに派遣した。 1923年6月、中国共産党第3回会議は、政治及び組織的独自性を保持した下で、国民党に合流する決定を採択した。1924年1月26日、孫文と駐中ソビエト代表アドルフ・ヨッフェにより、中ソ協定が署名された。北京の中央政府を支配していた呉佩孚も、モスクワと孫文の接近に自分の権力に対する危険を見て、ソ連との関係調停に着手した。しかしながら、クレムリンは、既に独自の選択を行っており、これには国共合作が少なからず影響していた。1924年9月20日、ソ連は、張作霖と東清鉄道に関する協定を締結し、それに従い、鉄道は中ソの共同管理下に移された。既に9月末、達成された合意に従い、ソ連は、1,000万元の借款を孫文政府に提供し、編成中の中国国民革命軍のために武器を納入し始めた。その外、1924年10月、V.ブリュヘルを団長とする最初のソビエト軍事顧問団が広州に到着した。 「省軍閥」間の絶え間ない権力闘争の過程において、張作霖へのクレムリンの態度は変わり始めた。特に、1926年1月、東清鉄道において、奉天軍の鉄道輸送費問題に関して、緊迫した紛争が発生した。1925年末までに、輸送費の債務は1,400万ルーブルに達し、東清鉄道の管理者A.イワノフは、軍部隊と貨物の無償輸送を禁じた。1926年1月、中国軍司令部は、拒否した場合銃殺すると鉄道乗務員を脅しつつ、勝手に列車を運行し始めた。1月22日、イワノフが逮捕されことは、事実上、張作霖による東清鉄道の奪取を意味した。 ソビエト指導部は、日本の著名人層は張作霖と他の緩衝将軍との交代に同意しているが、ソ連は「正常関係の確立の条件の下では、張作霖と他者の交代の根拠」を見出していないと示唆して、張作霖に働きかけようと試みた。 しかしながら、張作霖と合意に達することはできなかった。1926年6月、彼は、今後の「赤」への共同対策計画の審議のため、北京で呉佩孚と会見し、1926年8月21日、東清鉄道管理部に次の要求を提示した。東清鉄道の全裁判権を奉天当局に引き渡すこと、鉄道教育課を閉鎖すること。そして、ソビエト側の抗議にも拘らず、9月、彼は自分の脅迫を実行した。 張作霖がソ連に対して行った政策、並びにモスクワの同盟者の軍事的失敗は、クレムリンにおいて強情な元帥を物理的に除去する決定をもたらした。この作戦は、労農赤軍情報局職員、経験豊富な破壊工作員であるフリストフォル・サルヌィンに委任された。作戦計画を立案するに当たって、サルヌィンは、レオニード・ブルラコフを行動させた。 スターリンが立案した計画は、奉天の宮殿での強力な地雷の爆発による張作霖の除去を予定していた。宮殿に地雷を持ち込み、元帥の部屋にそれを仕掛け、時限装置を夜間にセットすることは、9月末にそこでコンサートを行うオーケストラ内のサルヌィンのエージェントが行うはずだった。地雷を満州に持ち込むことは、ブルラコフに委任された。 1926年9月24日、イワン・ヤコヴレヴィッチ・シューギン名義の文書を持ったブルラコフは、ポグラニーチナヤ鉄道駅に到着し、東清鉄道警察に勤務していたサルヌィンのエージェント、メドヴェージェフに地雷を手渡すはずだった。しかし、メドヴェージェフは、既に張作霖の特務機関の監視下にあった。乗客の1人と彼の接触を認めた後、警察官は、客車を捜索して、地雷を発見し、その後、ブルラコフ、メドヴェージェフ及び彼の補佐官であるヴラセンコは逮捕された。 ソビエト公式当局は、ブルラコフを「白衛匪賊」と呼び、彼と直ちに絶縁し、張作霖暗殺の準備は移民のせいだとされたが、これを信じる者は少なかった。1927年夏、ハルビン裁判所は、暗殺関係者に懲役を言い渡し、ブルラコフは、かせをはめられて、2年以上、独房に収監された。ブルラコフ、メドヴェージェフ及びヴラセンコは、1930年4月14日になって初めて釈放され、東清鉄道での戦闘時に捕虜となった中国人将校5人と交換された。 暗殺失敗後、モスクワと張作霖の関係は、露骨に敵対性を帯びた。1926年11月、彼はСунь Чуаньфан(孫伝芳?)将軍指揮下の国民革命軍と対決し、これをЦзюцзян(?)-南京地区で撃破した。1926年12月1日、全北部の「軍閥」の長、「安国軍」総司令となり、中国共産党を批判する「反共マニフェスト」を発表した。後に、特に「ボリシェビズムは、毒蛇、猛獣のように進んでいる・・・。我々の希望は、旱魃後の雨のように到来し、我々の生活を救う安国軍だ」と書かれたビラが、中国北東部の住民中に出回り始めた。 当時、張作霖は、蒋介石を積極的に支持し始めた。蒋介石は、1926年3月に人民革命軍部隊の隊列から共産主義者を追放して、ソ連との外交関係を断絶し、1927年4月に上海の共産主義者の蜂起を鎮圧し、南京に胡漢民の新しい国民党右派政府(武漢の汪兆銘を首班とする国民党左派及び共産政府への対抗)を創設した後、ソビエト軍事及び政治顧問は、急いで中国を離れざるを得なかった。1927年2月、張作霖は、「人民統治の発展」と「赤い過激派」の除去を組み合わせた新しい政治プラットフォームを発表し、6月25日、蒋介石は電信を送り、「赤」への共同対策のために同盟を結ぶ用意があることを表明した。この際、彼は、自らを孫文の旧友と呼び、自分の行動を彼の意思の実行と評した。電信では、彼が「赤」に反対しているだけで、特に赤に対して戦争を行っているとも語られていた。 1927年初め、武漢政府軍は、次期攻勢を開始し、当初、北方攻勢は成功した。回答として、張作霖は、満州での蜂起を懸念して、ソビエト代表団に対する一連の行為を行った。3月11日、ハルビン通商代表部の捜索が行われ、3月16日、ソビエトの株式会社「トランスポルト」のハルビン事務所が閉鎖された。3月31日、鉄道労働組合議長ステパネンコ、教官コソラポフ及び東清鉄道ハルビン電信事務所主任ヴィリドグルベの家宅捜索が行われ、4月6日、駐北京ソビエト領事館に対する襲撃が実行された。駐在武官の部屋の捜索中、警察は、暗号、中国共産党のエージェント及び武器納入のリスト、諜報業務への援助提供に関する中国共産党への指示書、並びに中国と西側諸国間の紛争発展を促進するためには、「強盗及び大量殺人を含めて、いかなる措置も避けるべきではない」と書かれたモスクワからの指令書を押収した。当時、北京で中国共産主義者の大量逮捕が行われており、中国共産党創設者の1人、李大釗を含む25人は、4月28日に銃殺された。 1927年2月28日、張作霖の軍が南京近郊でソビエトの汽船「パーミャチ・イリイッチャ」を拿捕し、外交伝書使3人とソビエト政治顧問の妻ファイナ・ボロディナを逮捕した以上なおさらであった。この後、張作霖は、南北間の和平締結を得ることを目的にして、M.ボロディンに働きかけようと試みた。5月に取引が失敗した時、F.ボロディナは、北京の刑務所に移され、6月、武器と扇動文献の輸送の嫌疑で裁判にかけられた。しかしながら、フー裁判官を買収することに成功した(彼には、20万ドルの賄賂が渡された。)後、彼は7月12日に無罪判決を言い渡し、直ちに逃亡した。釈放されたF.ボロディナは、暫くの間、北京に潜伏した後、ラクダで新疆を経由してソ連に呼び戻された。 満州においてソビエト市民及び施設に対する挑発を行いつつ、張作霖は、中国北部に住み着いた白衛移民組織のリーダーと胡匪の頭目にソビエト領土に対する武装攻撃を積極的に促した。1927~1928年に渡り、OGPU国境警備・軍総局の要覧に従えば、中ソ国境において、白衛軍部隊と胡匪グループは、90回以上、ソビエト領内に侵入した。この際、国境警備隊により、約20個の白衛軍支隊と匪賊グループが撃滅され、160人以上が殺害され、100人以上が負傷した。 その間、張作霖の立場は、非常に複雑なままであり続けた。1927年末~1928年初め、彼は、当初は武漢の人民解放軍、後に蒋介石の軍と戦わざるを得なかった。それ故、1928年、張作霖は、息子の張学良を通して、日本人との交渉を始め、その支援の下、中国北東部に独立満州共和国を建国しようと試みた。東京では、張作霖の構想に異議はなかったが、共産主義運動に対抗し、満州北部におけるソ連の利益に対してアグレッシブな政策を採ることを義務付ける等、日本の庇護下での緩衝国家「独立満州共和国」の建国について、一連の条件を提示した。 しかしながら、日本人と張作霖の交渉については、間もなく、OGPU外国課ハルビン支局長ナウム・エイチンゴンの知るところとなり、直ちにモスクワに伝えられた。クレムリンは、この交渉にソ連極東国境への直接の脅威を見て、張作霖を除去する決定が再び採択された。この作戦の実施は、エイチンゴンと1927年から在上海非合法支局を指導していたサルヌィンに委任された。作戦へのサルヌィンの参加は、彼が満州にロシア移民、中国人を問わず、多数のエージェントを有しており、全ての疑いが日本人にかかるよう、除去を行うことができることが理由となった。 1928年6月4日夜、張作霖の特別列車は、北京から奉天に向かっていた。列車が奉天郊外に近付いた時、張作霖の客車の下で、強い爆発が起き、その結果、彼は胸に致死傷を負い、数時間後に奉天の病院で死亡した。その外、爆発時、呉俊陞将軍も含めて更に17人が死亡した。中国兵ではなく、日本兵により警備されていた北京-奉天と南満州鉄道の分岐点である陸橋に地雷が仕掛けられていた以上、満州に対するコントロールを失うことを恐れて、アメリカ人顧問スワインヘッドを通したワシントンと張作霖の接触に不満だった日本人により暗殺が組織されたと、全員が誤解した。電気雷管を動作させた日本人将校の名前、東宮大尉すら挙げられた。 それにも拘らず、張作霖の除去は、ソ連に望ましい結果をもたらさなかった。元帥の後継者、息子の張学良は、1929年1月、蒋介石との同盟に入り、南京政府を承認し、8月、ソ連との武装衝突の準備を開始し、10~11月には、東清鉄道地区で起こった。張作霖の死後、中国北部に対する支配を失った日本は、1931年に満州を占領し、その領土に傀儡国家、満州国を建国することにより、ソ連国境自体に関東軍を展開する機会を得た以上なおさらである。 長い間、日本人による張作霖除去に関する説は、誰も異議を唱えなかった。1946~1948年、日本の戦争犯罪者に対する東京国際軍事裁判において、この説は、戦時中陸軍省兵務局長だった田中隆吉将軍の証言での確認すら得た以上なおさらである。張作霖の死について語りつつ、「張作霖暗殺は、関東軍の上級参謀将校河本大佐により計画された・・・。目的は、張作霖を取り除き、張学良を首班とする新国家を樹立することだった・・・。その結果、1928年6月4日、北京から来た列車が爆破された・・・。ダイナマイトを使用したこの暗殺には、朝鮮から奉天に到着した第20工兵連隊の将兵の部隊が参加し、その中には、オザキ大尉がいた」と彼は請け負った。 しかしながら、40年代末既に、日本人は、元帥除去のためのいかなる理由もなかったと主張して、張作霖暗殺への関与を厳格に否定していた。田中隆吉将軍が、ソビエトの捕虜となり、ソ連国家保安省の証人として徴募され、東京裁判でソビエト側が指図した証言を証言することにより、被告から証人に移されたことが明らかになった以上なおさらである。90年代初め、上記の通り、最も閉ざされたソビエトの公文書へのアクセスを有したD.ヴォルコゴノフは、ソビエト特務機関の張作霖暗殺への関与を認め、その後、この問題にピリオドを打つことができたはずだ。イギリスの百科事典(それに引き続き、西側の一連の他の便覧も)が90年代既に、張作霖の項目において、彼の暗殺を日本の満州占領を誘発することを期待した「日本の過激派」の責任に負わせたことは興味深い。
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/244.html
前の話へ 【彼女の葛藤】後編 紫と人里の甘味処へ行って以来、霖之助は暇さえあれば紫のことを考えていた。 ついこの前までは寝食を忘れて没頭していた読書。それすらも、気が付けばページをめくる手が止まっている。 あれから何度も2人で人里へと足を運んだ。ある日は紫の服を買うのに付き合い、ある日は有名な食事処で舌鼓を打つ。 紫の弾む声、ふと見せる仕草、くるくる変わる表情に、我を忘れて見とれていたことも少なくない。 奔放な彼女には振り回されてばかりだが、今ではそれすらも心地よい。 紫に惹かれている。自分にそんな感情があったとは驚きだが、一度自覚したらもう止まらない。 出来ることならば、友人以上の関係を。そんな想いが日々膨らんでいく。 だが、心のどこかからその想いを否定する声が湧き上がる。 何しろ紫は幻想郷でも指折りの大妖怪だ。それに比べ、自分は少々知識があるだけの半妖に過ぎない。 それに、彼女が幻想郷をどれだけ愛しているのかはよく知っているが、自分に対しては愛と呼べる感情を抱いてくれているのかどうか、そんなことにすら自信がない。 もし紫に告白して、『もう幻想郷と結婚しているの』などと言われたら、きっと自分は立ち直れないだろう。 虎子は欲しいが、虎穴を守る親虎が強大すぎる。 だから今の関係で十分。箱に入った猫の生死は既に決まっているが、箱を開けさえしなければいつまでもその生存を信じていられるのだから。 そう考えていたある日。 「おーっす、香霖。最近紫とよろしくやってるみたいじゃないか」 香霖堂の2大赤字要因の一角、魔理沙が店に訪れた。 「……魔理沙、そんな話をどこから聞いたんだい?」 「どこからも何も、里中で噂になってるぜ。偏屈者の香霖に女が出来て、相手は長い金髪の美女とか。 香霖の知り合いでその条件に一致しそうなのはあいつくらいのモンだろ。 第一私も甘味処で見たしな。鼻の下伸ばして『あ~ん』なんて、まっさか香霖がやるとは思わなかったぜ」 ニヤニヤと笑う魔理沙。 どうやら噂と人の目を甘く見ていたらしい。ため息が出そうになるのを、眼鏡の位置を直して誤魔化した。 「んで、どこまでいったんだ? 祝言とかはまだなのか? 仲人ならやってもいいぜ?」 魔理沙もいつの間にか耳年増の仲間入りを果たしてしまったようだ。 妹のような少女の歓迎しがたい成長に、一抹の寂しさを覚える。 「確かにぼくが彼女に惹かれているのは確かだ。それは否定しないよ。 だが向こうは幻想郷でも最高クラスの大妖怪だし、僕が釣り合う相手じゃないだろう。 それに、彼女は結界の維持という使命がある。重荷になるくらいなら今の関係で十分だよ。 そもそも僕がどれだけ焦がれたところで、紫にその気がないなら意味がない」 「女心がわかってないなあ香霖。そういう時は力づくでも奪って見せるとか言って欲しいもんだぜ。 おっと、香霖より紫のほうが強いとか野暮なことは言うなよ。 第一、見てる限りじゃ紫だって期待してるようにしか見えないしな」 「……そう思うかい?」 すがるような目をしているのが自分でもわかる。 さっきの言葉は建前。本当は彼女と一緒にいたい。朝起きるときも、昼の穏やかな一時も、夜眠りにつく瞬間もずっとだ。 これまでにも、つい紫を抱きしめそうになって我に返ったことは何度もあった。 もし、紫も自分を好ましく思っていてくれるのならば―― 「ああ、間違いないな。女の勘ってやつだ。 思い切って告白してみろよ。どうせダメだと思ってんだろ? なんかの間違いでも上手くいけばめっけもんじゃないか」 「……そう、だな。どうせダメなら、あがいてみてもいいかもしれない。 どの道、何もしなければ僕が本当に望む関係にはなれないんだ。たまには大勝負に出てみるとしよう」 「ようし、その意気だぜ香霖。なあに、ほとんど結果は見えてるさ。私の目をなめるなよ」 強気な言葉に苦笑しつつ感謝する。確かに、自分はちょっと諦めが早すぎたかもしれない。 もやもやしていた胸は、告白すると決めた瞬間やけにすっきりした。 ――なんだ、結局僕は現状で満足する気なんか微塵もないんじゃないか。 数日後。紫と出かけたその帰り道。 「……紫。大事な話があるんだが、いいかい?」 霖之助はここで勝負に出ることにした。 「なあに、改まったりして」 いつもの達観したような雰囲気とは違い、何かを決意したような霖之助。 それを感じ取った紫は、いつもの態度こそ崩しはしないものの、どんな言葉が飛び出してくるか気が気ではない。 こちらを向いた紫と目が合う。今からこの目に向かって告白するのだという事実を前に、心に一滴の逡巡が落ちる。 じわじわと心を染め上げようとするそれを無理やりぬぐい取り、霖之助は生涯で最も緊張する瞬間を迎えた。 「紫、僕は君が好きだ。君がよかったら、僕の恋人になって欲しい。」 最初の一言を乗り越えると、後は止まらなかった。つたなくてありきたりな言葉だけれども、これが今の正直な気持ち。 「……」 一方、この展開は予想していなかったらしく、唖然としている紫。 霖之助が自分を憎からず思っていくれていることは確信していたが、まさか告白されるとは思っていなかった。 いや、楽観していたのだ。 彼の想いがどれほど強かろうが、自分の立場や諸々の状況を理由に今の関係で踏みとどまるだろうと。 だが、彼はそんな障害を乗り越え、紫のことが好きだとはっきり伝えてきた。 自分がそこまで想われていたことが嬉しくてたまらない。 それでも、霖之助の想いには応えられない。 かつて自分に誓ったのだ。特別な恋人は作らないと。 自分は幻想郷にとって必須の存在であり、自分も幻想郷を誰よりも愛していると自負している。 そんな自分が愛する人を持ち、万が一その人物の存在が幻想郷より大きくなってしまったら? 最初に結界を作ったときは、妖怪たちと大揉めに揉めた。 今ではその有効性からほとんどの妖怪が結界を支持してくれているが、それでも反対派が根絶できたかどうかはまだわからない。 霖之助を人質にとられ、その存在を盾に結界の解除を迫られたとき、自分が幻想郷を選んでくれるかどうか。 それでなくとも、愛する人が出来たことで不測の事態が発生する恐れがある。 だから、この申し出を受けることはできない。今までの自分をいつか否定してしまうかもしれないから。何より、霖之助が危険にさらされるかも知れないから。 もう一度、霖之助の気持ちを確認する。 「……本気なの?」 「僕は本気だ」 一瞬の迷いもなく答える霖之助。 その目には一点の曇りもなく、どうやら誤魔化すことは出来ないと紫は悟った。 2人の間に沈黙が下りる。 紫は、返事を言おうとしては踏み出せない自分に歯噛みしていた。 辛いのだ。既に答えは決まっていても、それをはっきり告げることが。霖之助を拒絶することが。 だからと言って逃げることは出来ない。 霖之助が待っている。彼が望む答えを迫ることも、急かすこともなく、ただ紫が決断するのを待っている。 顔を俯け、ぎゅっと服を握り締めると、ようやく紫は蚊の泣くような声を絞り出すことに成功した。 「――ごめんなさい」 それからどうやって帰ってきたかは覚えていない。 気にしなくていいとか、これからも今までどおりとか会話をした気はするのだが。 気が付いたら布団で寝ていて、一晩寝ても虚脱状態は治らず、ただ椅子に座ってぼうっとしていた。 それでも後悔だけはしていない。 自分は現状に満足せず、勇気を振り絞って告白した。その結果なら、甘んじて受け入れよう。 長い煩悶の末、ドロドロと定まらなかった気持ちをようやく形にすることが出来たその時、 「よう香霖! たしか昨日決行だったよな。結果はどうだった?」 先日背中を押してくれた少女が飛び込んできた。 その口調はおそらく成功と信じて疑っていないからだろう。ありがたい話だが、今はその信頼が痛い。 「ああ、ダメだったよ」 「だろう? だからあれだけ言って……ってはぁ!? ダメ!? ダメって言うのはあれか、ごめんなさいってことか!?」 「まさしくそう言われたよ。自分は幻想郷を守る義務があるから、特定の一人に入れ込むわけにはいかないってさ」 「なんだそりゃ!? 納得いかーん! 第一あいつは間違いなく香霖に惚れてるはずだぜ!? どう見たって間違いなしだ!」 バシバシとカウンターを叩く魔理沙。どうやらかなり釈然としないようだ。 「君の目も曇っていたということだろうね。とにかく今はそっとしておいてくれないか?」 「いーやダメだ! 可能性が全くなくなるまでは足掻いてもらうぜ! 一度告白したなら突っ切って見せろよな! 第一これで見捨てたら恋の魔法使いの名が廃る!」 どうやら魔理沙はまだ可能性があると思っているようだ。 この諦めの悪さは既に美点だな。苦笑しつつも、霖之助はまたしても勝手に諦めようとしていた自分に気付いた。 そうだ、まだ自分はやれることを全てやりきってはいない。 一度紫の気持ちを手に入れてみせると決めたなら、力尽きるまで前進し続けよう。 どうせ振られた身、これ以上失うことなど恐れはしない。 「やれやれ、僕はまた弱気になっていたようだね。ありがとう魔理沙。 君に目を覚まさせてもらうのはこれで2度目だが、今度こそ3度目の正直だ。こうなったら、とことん悪あがきをしてみせる。 2度あることを3度繰り返す気はない!」 「ようし! そうと決まればまずは情報収集だ! 油揚げ借りるぜ!」 「というわけだ。紫の様子はどうなんだ? 藍」 「……人をいきなり呼び出しておいて尋問とはいい根性をしているな」 「人様の油揚げ食っておいて言うことじゃないぜ。そらキリキリ話せ」 「話すと言っても、昨日から部屋に閉じこもって呆然としているばかりだ。話しかけても返事すらまともに返ってこない。 あれは下手に号泣するよりショックが大きいな」 どうやら紫のほうもかなり気にしているようだ。それを聞いた魔理沙はいっそう活き活きとして話を進める。 「ようし、とにかく紫のほうも香霖がかなり気になってるってことだな。 まったく義務とかなんとかわかったようなこと言いやがって。 そんなにショックを受けるってことは、それだけ香霖が好きでたまらないんだろうに」 「それで、お前はどうするつもりなんだ? 私としても紫様が元気になるなら協力は惜しまんが」 「ふっふっふ、要は簡単だぜ。紫だって本当は香霖といい関係になりたいんだろう? そこんとこの気持ちをちょちょいとつついてやれば向こうから香霖の懐に飛び込んで来るはずだ。 まあ恋の魔法使いに任せておけって」 こうして、魔理沙発案の作戦がスタートした。 それからさらに数日後。 霖之助が会って話をしたいらしい、と藍から伝えられた紫は、気まずい思いを引きずりつつ香霖堂へ向かった。 「……こんにちは」 「やあ、よく来てくれたね。この前はすまなかった」 「ううん、私のほうこそ。それで、話したいことって?」 胸の痛みはともかく、なんとか平静を保つことが出来た。そんな紫の安堵は次の一言で木っ端微塵に砕かれる。 「……実は、この前君に振られた後、ある人物に告白されたんだ」 「え……」 さあっと血の気が引いていく。 告白された。それはつまり、霖之助を好きだと言う女性が現れたということ。 「あ……相手はだれ?」 声の震えに霖之助はあえて気付かない振りをした。 「……申し訳ないんだが、それは言えないことになっているんだ。 向こうも僕が誰かに振られたことまでは知っているけど、誰かまでは伝えていない。そういう約束で話をしたからね」 「……そう。それで、霖之助さんはどうするの?」 手足の震えが止まらない。 霖之助の答えを考えただけで倒れそうになるが、彼を振った自分にそんなことは許されない。 たとえそれがどんな答えだったとしても、その結論に至った原因は間違いなく自分にあるのだから。 「最初は断ったよ。君に振られたばかりで、すぐに誰かと付き合う気にはなれなかったから。 でも、彼女がこう言ったんだ。 私のことが嫌いならきっぱり諦めるけど、誰かに振られたからなんて理由で振られるのは納得できない。 私と付き合うかどうかを、私と関係ない理由で決めないで欲しい。ちゃんと私を見た上で決めて欲しい。 それを聞いてショックだったよ。 僕は僕が振られたばかりで辛いからって、僕を好きでいていくれるその子に同じ思いをさせるところだったんだ。 だから、彼女の申し出を受けることにしたよ。情けない話さ。君に振られたから、僕に言い寄ってくる別の子となんてね。 でもそんな自己嫌悪は彼女には関係ないんだ。だから、せめて彼女の気持ちには応えたい」 喉がヒリヒリする。手足の感覚などとうになく、崩れ落ちそうになるのをこらえるので精一杯だ。 事ここに至って、自分がどれだけ霖之助を想っていたのかを思い知らされた。 なにが今の関係は続く、だ。小ざかしいことを考えて、悲劇の主人公を気取っていた自分を八つ裂きにしてしまいたい。 霖之助にしがみついて、恥も外聞もなく泣き喚いて、やっぱり自分も霖之助が好きなのだと叫びたい。 だが、それは出来ない。 自分は彼を拒絶したのだから。彼が何をしようと、文句を言う資格など自分にはありはしないのだから。 「……わかったわ」 なんとか搾り出した声は掠れ、普段の鈴がなるような声とは程遠い。 だが、後一言だけは言わねばならない。 「私が言えた立場じゃないけど、おめでとう……霖之助さん」 自室に戻った紫は、後悔の念に押しつぶされそうだった。 なぜ自分は彼を拒絶したのか。結界の維持という使命は、本当に彼と生きることとは相容れなかったのか。 自分がもっと覚悟していれば。どんなに辛くても、霖之助との生活も幻想郷を守る使命も投げ出さないと腹を括っていれば。 だが、もう取り返しがつかない。 結局自分のせいで、今までのように彼と話すことも、一緒に里へ出ることも出来なくなる。 彼の隣には別の女性がいるのだから。 「……そんなの、嫌」 それでも、湧き上がってくるこの感情は止められなかった。 霖之助の隣を取られたくない。 霖之助の目が、声が、気持ちが、自分でない誰かを向いているのは嫌だ。 そういえば霖之助はこう言っていた。 『明後日、その子と里へ行く約束もした』 と。 紫は自分の中でなにかがメラメラと燃え上がるのを感じていた。 2日後、紫は香霖堂で霖之助を覗いていた。 みっともないことをしているのはわかっている。 霖之助を失いたくないならそう告げればいい。告げることも出来ないなら諦めるべきだ。 心のどこかで冷静な自分がそう叫んでいたが、どちらを選ぶことも出来ず、こうして覗きをしている。 今度は自己嫌悪で心が重苦しくなりつつも、霖之助の監視は緩めない。 見るほうに気持ちが偏りすぎて隠れるほうがおろそかになり、霖之助にはバレバレだったが。 しばらくすると、香霖堂の扉が勢いよく開いた。 「よう、香霖。待たせたか?」 入ってきたのは、霖之助とも紫とも馴染み深い魔法使いの少女だった。 いつもの魔法使い然とした格好ではなく、前の開いた黒いショートジャケットに黄色のレディースTシャツ、 下半身は赤いチェックのプリーツミニスカートにボーダーのオーバーニーソックスと、女の子らしい格好をしている。 頭は帽子を被らず、よく梳いた髪をいつものように一房だけ三つ編みにしていた。 「ずっと家にいたんだから、待っているも何もないさ。 ……ふむ、わざわざ着飾ってくれたのかい? よく似合っているよ」 霖之助がそういうと、魔理沙は照れくさそうに頭をかいた。 「そ、そうか? よくわかんないからアリスに聞いたんだが。 な、なあ、香霖は……その、か、可愛い……とか思って……」 最期は恥ずかしくて言えなかったらしい魔理沙に微笑みつつ、霖之助はその先の言葉を拾った。 「ああ、とても可愛いよ。いつもそうだが、今日は一段とね」 それを聞き、パアッと顔を明るくする魔理沙。 部屋の隅から『くぅっ』といううめき声が聞こえたが、2人とも聞こえない振りをした。 「そ、そうか。よかった。 よし、急いで里に行こうぜ! 時間が勿体無いからな!」 「ああ、そうしよう」 苦笑しつつ立ち上がる霖之助。その左腕に魔理沙が右腕を絡めてきた。 「魔理沙?」 「い……いいだろ別に。今はその、こ、恋人同士なんだし」 顔を背けながら言う魔理沙。 紫はギリギリギリギリ……という歯軋りの音を隠しもしない。ちらりと目の端をその顔が掠めたが、血涙のようなものが見えたのはきっと気のせいだ。 「もちろんだよ。それじゃあ行こう」 腕だけでなく、手も握って歩き出す2人。 背後からは『はぅぅぅぅぅぅぅぅ』という声と、だれかが崩れ落ちるような衣擦れの音が聞こえてきた。 そして、道中。 「ふっふっふ。動揺してる動揺してる。作戦は順調のようだな。 スキマを動かしてついて来てるが、こっちの視界をあんまり考慮できてないみたいだぜ。バレバレだ」 「……僕としては、君の演技力に驚かされているよ」 「女を甘く見るなよ香霖。子供と思って舐めていると気がつかないうちに大きく成長しているものだぜ」 話しているのはこんな内容でも、2人とも一応満面の笑みを浮かべている。 傍から見れば睦言を囁きあっているようにしか見えないだろう。 紫のブツブツブツブツ……という声をBGMに、2人は人里に到着した。 例のバイキングに行った霖之助と魔理沙は腕を組んだままケーキをとり、そのまま壁際の席に並んで座る。 「魔理沙、君は右利きじゃなかったのかい?」 「いいじゃないか。一時でも離れたくないんだ。 ほらほら、可愛い彼女に食べさせてくれよ。あ~ん」 女は怖い。ひとつ賢くなった霖之助は、言われるがままに魔理沙の口へケーキを運んでやった。 紫は流石に店内でスキマを開くほどには自分を見失っていなかったらしく、変装して2つとなりの席に座っている。 店内でサングラスはどうかと思ったが、まさか指摘することもできず演技を続ける2人。 「美味しいかい?」 「美味しいに決まってるぜ! 愛情というスパイスが効きまくってるからな!」 ビキッという音が聞こえた。 顔を動かさずに横を伺ってみると、紫が握っているカップにヒビを入れたらしい。 しかし、ここでひるんでは作戦の意味がない。心を鬼にして笑顔を浮かべ、霖之助は慣れない言葉を囁く。 「それはよかった。胃がもたれるくらいかけてあげるから、存分に味わうといい」 「それはありえないな。かけてもらえばもらうほどもっと欲しくなるんだぜ?」 甘すぎて口から砂糖でも吐けそうな気分だ。 一方の紫はといえば、もう隠れることすら念頭にないのだろう。 どこから取り出したのやら、ハンカチをギリギリかみ締めている。 その異様な雰囲気のせいか、周りの客は見て見ぬ振りをしているらしい。 やりすぎたんじゃないだろうかと内心冷や汗ものの霖之助だったが、魔理沙は手を休めるつもりはないようだ。 「なぁ、ぼおっとしてないでもっと食べさせてくれよ。 こんな可愛い彼女以外に見るものなんてないだろう?」 肩に頭を預け、上目遣いでこちらを見つつ胸の辺りを人差し指でぐりぐりする魔理沙。 ブチィッという音が聞こえた気がしたが、気にしてはいけない。僕は何も聞いていない。 そう自分に言い聞かせ、霖之助も行くところまで行く覚悟を決めた。 そして帰り道。 精魂尽き果てたらしい紫は、上空でスキマから上半身をだらりと垂らしてまたブツブツ言っている。 行きのように呪詛が篭ってはいない所を見ると、どうやら本格的に打ちのめされたようだ。 「今日はありがとう、魔理沙。楽しかったよ」 香霖堂に入り、ここまでやれば十分だろうと声をかける霖之助。 しかし、魔理沙はもじもじしながら目配せしてきた。 その目はこう言っている。 『ここからが最後の一押しだ』 「あ……あのさ……。 その……。 き、今日は……泊まっていっても……いいかな……。 も、もちろん恋人としてだぜ……」 まさかそんなことまで言うとは思っていなかった霖之助が呆然としていると、魔理沙はとろんとした目で霖之助に近寄り、目を閉じて顔を近づけてきた。 どう見ても本気にしか見えない魔理沙に霖之助は目を白黒させ、気が付くと互いの息がかかるほどに顔が接近していた。 そしてまさに唇が触れようとしたその瞬間、 「だぁめえええーーーーーーーーーーーーーーーーー!」 絶叫と共に紫が魔理沙を突き飛ばし、霖之助に抱きついた。 「いっ……たあ。何すんだよ紫!」 「ダメよ! もう我慢できない! 霖之助さんをとられるなんていやあ!」 「そうか、お前が香霖を振ったやつだな! 今さら何しに来たんだよ!? 香霖がお前を振ったんならともかく、お前が振っておいて香霖をとるなだと!? ふっざけんな!!」 「だって……だってぇ……」 「人にとられるのが嫌なら最初から振ったりすんな! とにかく、今香霖の彼女は私だ! お前の出番はないからすっこんでろよ! それとも何か!? 実はお前も香霖が好きだとか言うんじゃないだろうな!?」 「う……そ、そうよ、私は霖之助さんが好き! 大好きよ!」 「ならなんで振ったりしたんだよ! どうせ結界を維持する義務とかなんとか言い訳して自分から勝手に諦めたんだろ!? 香霖の気持ちも考えずに! そんなやつに香霖を渡してたまるか!」 演技をしているうちに本気で腹でも立ったのか、火を吐くような剣幕で怒鳴る魔理沙。 紫も売り言葉に買い言葉とヒートアップしていく。 「ええそうよ! 確かに最初はそう自分に言い聞かせて誤魔化したわ! 一度霖之助さんを振った私が、あなたと何をしたって文句を言う資格なんてないのもわかってる! でも嫌なの! 霖之助さんが私以外の誰かと幸せそうに笑ってるなんて耐えられないのよ!」 「調子のいいことを言うな! じゃあ何か!? 一度振ったけどやっぱり香霖の恋人にしてくれってのか!? ほいほい言うことを変えやがって! そんなやつの言うことが信用できるかってんだ!」 「調子のいいことを言ってるのは百も承知よ! それでも軽い気持ちで言ってるつもりなんかないわ! 悩んで悩んで、悩みぬいてやっと出た答えだからこんなことまでしてるのよ! はっきり言っておくわ! もう霖之助さんが私を見ていてくれなくても構わない! みっともなくても、誰になんと罵倒されても、霖之助さんが振り向いてくれるなら全力を尽くすって! そして霖之助さんが応えてくれたら、どんな辛いことがあっても彼を切り捨てたりはしないって! 命を懸けて、霖之助さんと一生添い遂げてみせる! 八雲の名において誓うわ!」 「……」 「……」 永遠ににらみ合いが続くかと思われたが、よく見ると魔理沙の肩が震えている。 その震えが大きくなり、顔も引きつってきたかと思うと、ついに魔理沙が限界を迎えた。 「ぶはあっはっはっはっはっはっはっはっは!」 さっきまで怒鳴りあっていたかと思えば、いきなり爆笑し始めた魔理沙に呆然とする紫。 「いや~ここまで上手いことハマってくれるとはなあ! よかったな香霖! やっぱりこいつお前にベタ惚れみたいだぜ!」 「え? え? え? なに、どういうこと?」 まだ混乱している紫。すると物陰から申し訳なさそうに藍が現れる。 「すみませ~ん、紫様」 「え、あ、藍!?」 「いやいや、いじめて悪かったな紫。 お前がどうしても意固地になってるみたいだったから一芝居打ったんだ。藍も一枚噛んでるぜ。 それにしても熱かったぜ。熱くて熱くて死にそうだった!」 ようやく事態を把握する紫。 しかしまだ衝撃のほうが強いらしく、ただただ3人の顔を見渡している。 「それじゃ、邪魔者は退散するぜ! 香霖、今度は逃がさないようにしっかり捕まえとけよ!」 そんな紫を尻目に、魔理沙と藍はもう自分たちに用はないとあっさり帰って行った。 「……あれでよかったのか?」 「ん? なにがだ?」 「いや……お前は店主殿のことを……」 「よしてくれ。香霖は小さい頃から一緒にいた兄貴みたいなもんだぜ? お兄ちゃんに彼女が出来たんだから、嬉しいに決まってるだろ」 「……そうか、なら何も言うことはないな」 「さあ、今日は宴会だ! アリスに服の礼もしないといけないしな!」 そして香霖堂では、霖之助に抱きついたまま紫が硬直していた。 「……コホン」 霖之助が咳払いをすると、紫はビックゥッといった感じで飛び上がる。 「ああああああああの、霖之助さん、さっきのはその、えっと」 霖之助から離れて手をわたわたさせる紫を、霖之助はそっと抱きしめた。 「……あ」 「さっきのは、嘘だったのかい?」 寂しそうに囁く霖之助に、紫は慌てて首を振る。 「そ、そんなことはないわ! こないだはああ言ったけど、やっぱり私は霖之助さんが好きなの。 勝手なことを言ってるのはわかってるけど、それでも霖之助さんが誰かにとられると思ったら辛くて我慢できなかった。 だから……」 「もういい。それだけ聞かせてもらえれば十分だ。 君を騙すようなひどい男だけど……今度こそ、僕と付き合ってくれるかい?」 「……ええ、もちろんよ。 わたしこそ、一度振ったくせにこんなことを言う我侭な女だけど、それでもいい?」 「ふふ、じゃあお互い様ってことだね。 似たもの同士、これからもよろしく頼むよ……紫」 そう言うと、霖之助は真っ直ぐ紫を見つめ、紫はつい、と顔を上げて目を閉じた。 2人の影がゆっくりと重なり、記念すべき一日の夜が更けていった。 翌朝、日の光を顔に受けた霖之助が目を覚ます。 片腕に重みと痺れを感じて見てみれば、最愛の人が頭を預けて眠っていた。 安らかなその寝顔に微笑みながら、そっと髪に指を滑らせる。 「……ん」 どうやら起こしてしまったらしい。寝ぼけ眼でこちらを見つめる紫に、朝の挨拶をささやいた。 「おはよう……紫」 「ん~、霖之助さん……」 ふわふわした笑みを浮かべ、紫は霖之助の首筋にかじりついてきた。 霖之助の首に鼻を擦り付ける紫。霖之助は紫の髪を梳きつつ、自分の頭をコツンと当てた。 結局その日は一日中、同じ布団でゴロゴロとじゃれあうことになるのだった。 前の話へ 後日談へ
https://w.atwiki.jp/churuyakofu/pages/2.html
メニュー 検索 and or ジャンルやキャラ名でSSを調べたいときなどにご利用ください このwikiの管理者に連絡 練習帖 公式森近霖之助 霖之助・香霖堂関連 創想話創想話投稿作品一覧1~100 創想話投稿作品一覧101~ 創想話ジェネリック投稿作品一覧 ピックアップページ その他の投稿作品一覧 同人誌 霖之助スレ的キャラ紹介 霖之助スレ用語集 霖之助ウフフスレKENZENまとめ コメントログ リンク 更新履歴 取得中です。 ここを編集
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1537.html
魔法の森の入口には一軒の建物がある。 建物の名は『香霖堂』、外の世界から流れ着いた道具を変わり者の店主が売っている店である。 少ないが常連客は一応居るのだが、その常連客の中で代価を支払い物を買う常識のある者はほんの一握りの為店の売り上げは芳しくない。 そんな香霖堂に一人の少女が訪れた。 代価を支払わない常連客、黒白の魔法使いこと霧雨魔理沙だ。 カラン、カランとベルを鳴らし、魔理沙はいつもの様に香霖堂へ入る。 普段ならそのままズカズカと奥へ行くのだが、今日は入口で立ち止まり一言漏らす。 「なんだ、これ…」 ガラクタばかりの店内だが、常連にだけ分かる点がある。 荷物が増えているわけではない、ガラクタもいつもと同じように埃まみれなのも同じだ。 ただ、何故か散らかっている。 地震があったかのように、棚に置かれていた物も床に積まれていた物も同じように地面に落とされている。 中には壊れてしまった物もあるようだ。 「魔理沙、何時も言っているが黙って入ってこないで一声掛けてくれないか?」 店の奥からぶつぶつ小言を言いながら、透明な箱を抱えた一人の男が出てきた。 香霖堂の店主、『森近 霖之助』である。 「そんなことより香霖、地震でもあったのか? いつにも増して店が散らかっているじゃないか」 霖之助の小言を無視して魔理沙は聞く。 長い付き合いだからか、これ以上言っても無駄だと悟り霖之助は溜息を吐いてから答える。 「それはこいつの仕業だよ」 「こいつって、箱の中の奴か?」 霖之助に近づき、箱を覗き込んで魔理沙は聞く。 「ゲ、こいつは…」 箱の中には黒白の魔法使いの顔と紅白の巫女にそっくりな生物がいた。 「君も知ってるだろ? ゆっくりだよ」 「つまり、この散らかりは…」 「そう、全部こいつらにやられたんだ…」 もう一度溜息を吐き出す霖之助。 魔理沙も同じように溜息を吐く。 自分がやった事ではないにしても、流石に自分と同じ顔がやったのだか申し訳なく感じるのだ。 「で、そいつはどうするんだ?」 魔理沙の視線の先には二匹のゆっくりが飛び跳ねている。 箱の中の音は聞えないが、大方「こっからだしてね!!」だの「いいかげんにしないとおこるよ!!」等と言っているのだろう。 「とりあえず今は片付けを優先するよ。流石にずっとこのままにしておくわけにはいかないしね」 「そっか、手伝ってやろうか?」 「遠慮しておくよ。君に任すと大切な商品が無くなったり壊されたりしそうだからね」 「酷い言われようだぜ」 いつもと似たようなやり取りではあるものの、霖之助の表情は暗い。 一応使い方も分からないガラクタばかりとはいえ、それが壊されてしまったのがショックなのだろう。 「じゃ、今日は帰るぜ」 「分かった。暫く経ってからまた来るといい」 「またな香霖」 箒に跨って飛んで行く少女を見送り、霖之助は店の中へ入っていく。 相変わらず散らかったままの店内を見渡して、また溜息を吐く。 整理する切欠としては十分ではあるものの、やはりこうまで荒らされてしまったのがショックなのだろう。 「さてと…」 一言呟いて、切欠を作り出した元凶の入った箱に近づき蓋を開ける。 箱が開いたと分かった二匹のゆっくりは途端に喚き出す。 「はやくれいむたちをここだしてね!!」 「そうだよ!! まりさたちをとじこめるなんてひどいよ!!」 何でこういう事になったのか分かっていない二匹だが、霖之助は気にせず話し掛ける。 「ちゃんとこの箱から出してあげるさ。ただ、君達からは代価を頂かなければならないんだ」 「ゆ? 『だいか』?」 「『だいか』ってなに?」 代価という言葉がなんなのか分からないのか、ゆっくり達は霖之助に聞き返す。 「君達は僕の店を荒らしたからね、中には壊れてしまったものもある」 「そんなのしらないよ!!」 「ここはまりさたちのおうちだよ!!」 「そう言うのなら君達はずっとここにいなければいけない。それでもいいのかい?」 「「ゆぅ~…」」 ゆっくり達は思った。ここにずっといるのは嫌だと。 昔のように外を跳ね回りたいと。 「その『だいか』っていうのをやれば、れいむたちはここから出れるの?」 「そうだよ、君達から頂ければ僕は君達をその狭い箱から出してあげる事を約束するよ」 「じゃあ、まりさたちはなんでもやるよ!! だからはやくここからだしてね!!」 「本当に何でもやるのかい?」 「しつこいよ!! なんでもやるからはやくだしてね!!」 「じゃあ、後悔しないでくれよ?」 ゆっくり達は気づいていなかった。口元に浮かんだ霖之助の微かな笑みに… 霧雨魔理沙は箒に乗って香霖堂を目指している。 あれから一週間が経った。流石にそれだけ間を置けば、あの香霖堂の乱雑な店内も片付くと魔理沙は考えたのだ。 いつもの様に香霖堂の前で箒から降り、カラン、カランとベルを鳴らしながら店内へ入る。 以前の荒らされた店内を見たときと比べると、そんなに変わらないようにも見えるがやはり片付いているようにも見える。 元々物が雑多に置かれていたとはいえ、やはり常連にだけそれがいつも通りの香霖堂だと分かるものがあるのだ。 「香霖は…奥か?」 そのまま店の奥へ魔理沙は行くと、よく知る人物がそこにいた。 紅白の巫女、博麗霊夢だ。 「霊夢もきてたのか。香霖は?」 「今お茶菓子を取りに行ってくれてるわ。魔理沙も自分でお茶淹れなさい」 そう言って霊夢はお茶を啜る。 魔理沙は霊夢に言われた通りお茶の準備を始めながら、霊夢に話しかける。 「でも珍しいよな、香霖が自分から茶菓子を用意するだなんて」 「言われてみればそうね。なんか良い事でもあったんじゃない?」 さして興味が無いのか、霊夢は言い終えるとお茶を啜った。 魔理沙もお茶を淹れ終えて隣に座ると、霖之助が布を被せた箱を抱えて戻ってきた。 「なんだ、魔理沙も来てたのか」 「なんだとは酷いんだぜ。それより、早く茶菓子が欲しいぜ」 「そうね、お茶ばかり飲んでたからそろそろ甘いものが欲しいわ」 「はいはい、今渡すよ」 苦笑しながら、霖之助は箱に被せてあった布を退けると、霊夢と魔理沙はお互い時間が止まったかのように動かなくなった。 「ちょうど昨日作らせたばかりだったからね、二人ともいいタイミングで来てくれたよ。霊夢にはれいむを、魔理沙にはまりさをあげよう」 動かなくなった事に気づいていないのか、霖之助は固まってる二人に箱の中から取り出したゆっくりを渡していく。 箱の中には、一週間前に香霖堂を荒らした二匹のゆっくりがいた。 少し違う点は、二匹とも蔓を生やしていることだ。 霖之助は蔓に生えている赤ん坊のゆっくりをもぎ取り、そのまま口へ運ぶ。 その様子を見ているゆっくりは、擦れた声で「もうゆるじでくだざい…」「あかちゃんたべないで…」と呟いていた。 「な、なあ香霖…」 「その、箱の中身はなんなのかしら…」 少しずつ動き始めてきた魔理沙と霊夢はゆっくりを食べている霖之助に聞いた。 「何って… 見ての通り饅頭だよ。中々美味しいから食べてみるといい」 「いや、それってゆっくりでしょ?」 「確かにゆっくりだけど、饅頭である事には違いないよ」 「もしかして、それって店の中荒らして奴か?」 「そうだよ。あそこまで荒らされたのに何も頂かないで返すわけにはいかないだろ? だから今この子達には荒らした分の代金としてお饅頭を貰っているのさ」 そう言ってまたゆっくりの茎に生えている小さいゆっくりをもぎ取る霖之助、もう箱の中のゆっくりは泣いてしかいない。 「しかし二匹で荒らされたから良かったよ。一匹だけだったらこうやって饅頭を作る事はできなかったからね」 「…自分と同じ顔を食べられるのはちょっと複雑なんだぜ」 「魔理沙に同意するわ。それに、生き物は扱わないんじゃなかったの?」 「勿論このゆっくり達を誰かに売るつもりなんて無いさ。それに言ったろ? 荒らされた分の饅頭さえ頂ければちゃんと放してあげるって」 「じゃあ、それまではずっと飼うつもりなのか?」 「当たり前だ。ここは店で、この子達は店の商品を壊したんだ。代価を受け取り終えるまでは放すつもりは無いよ」 霊夢と魔理沙は顔を合わせ、溜息を吐く。 「香霖は私達と同じ顔をしてるこいつらを飼って何にも思わないのか?」 「見てるこっちとしては凄い複雑なんだけど…」 魔理沙は呆れ、霊夢は冷ややかな視線を向ける。 「おいおい、君達とゆっくりは違うだろう?」 その言葉に二人は驚いた。 この変わり者の店主がそういうまともな事をいうとは思わなかったからだ。 「香霖がそう言うとは以外だぜ」 「そうね、霖之助さんなら顔が同じってだけで同一視しそうだもの」 感心する二人に、店主は言葉を放つ。 それも、二人にとってはとても屈辱的な言葉をだ。 「盗んでいく君達と違って、ゆっくりはきちんと代価を払うんだ。一緒にしたらゆっくりに失礼だ」 「……」 「……」 二人の時は再び止まった。 自分と同じ顔をしている頭だけの饅頭以下と言われたのだ。これ程屈辱的な事は無いだろう。 「そう言われるのが嫌だったら、君達も勝手に盗んでいくのはやめるんだね」 霖之助の言葉に、二人は何も言い返せなかった。 箱の中のゆっくり達 草を食わされ生かされて 今日も明日も子供を作り献上す 昔のように跳ね回れる日が来るのはいつか それを知るのは半人半妖の店主だけ 終 こんな駄文を最後まで読んでいただきありがとうございます!! これを書いた切欠は、虐めSS一覧に霖之助の奴ってないんだ…って気づいたからです。 せっかく今年東方香霖堂の単行本が出るんだから、これは書かねばならんだろう!!と思いました。 できたこれは霖之助とゆっくりと言うよりは、ゆっくりを使った霖之助の霊夢・魔理沙虐めな気もします… 本当に御目汚し失礼!! by大貫さん 書いた作品 ゆっくりいじめ系352 虐められるゆっくり ゆっくりいじめ系382 ある馬鹿なゆっくりの話 ゆっくりいじめ系394 きめぇ丸 ゆっくりいじめ系421 めーりんとこうりん ゆっくりいじめ系488 ゆっくり飼ってます ゆっくりいじめ系497 携帯でチマチマ書いてみた ゆっくりいじめ系571 みんなで食べよう ゆっくりいじめ系572 きめぇ丸その後 ゆっくりいじめ系596 ゆこまち ゆっくりいじめ系611 どこで何が狂い出したのか… ゆっくりいじめ系628 鳩と餌と糞 ゆっくりいじめ系793 誰かがやらねばいけないこと ゆっくりいじめ系823 小ネタ7 ゆっくりいじめ系843 ゆっくり飼ってます2 幽香×ゆっくり系9 ある馬鹿なゆっくりの話2 ゆっくりいじめ小ネタ125 虫眼鏡 ゆっくりいじめ小ネタ128 ゆっくりが大好きだ!! ゆっくりいじめ小ネタ140 ガラス このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/touhouvision/pages/225.html
《梅霖の妖精》 No.157 Character <第三弾> GRAZE(0)/NODE(2)/COST(1) 種族:妖精 (自動α): 〔このキャラクター〕は「貫通」または「先制」を持つキャラクターから戦闘ダメージを受けない。 攻撃力(1)/耐久力(4) 「このお店は住みやすいわ~」 Illustration:雨宮結鬼 コメント 非常に防御向けの能力を持ったキャラクター。 しかしグレイズ値が0であるため、状況によっては攻撃も行うことが出来る柔軟性がある。 先制か貫通を持つキャラクターから戦闘ダメージを受けないという能力は、本人の戦闘力と相まってかなり強い。 ルナチャイルドは通らず、スターサファイアでも負けてしまう。 霧雨 魔理沙/1弾やレミリア・スカーレット/1弾を一方的に止められる。 フランドール・スカーレットや神槍『スピア・ザ・グングニル』を持ったキャラクターを一方的に止められる。 漆黒の風と組み合わせるとどんな相手からでも生きて帰ってくる。 逆に、該当する戦術を持っていない中型以上のキャラには弱いので、デッキによってはあまり意味がない。注意。 2008年5月2日より、ルールサマリー加筆に伴うテキスト変更が加えられた。 戦闘ダメージを受けないため、貫通によるプレイヤーへのダメージも発生しない。 貫通や先制を持つキャラクターが発生源であっても、楼観剣の効果ダメージは残念ながら無効化できない。あくまで戦闘ダメージに限られる。 コストも低く、耐久力も4あるため槌の子の効果を使ってマナチャージに活用することもできる。 公式QAより Q029.「耐性A」や「戦闘ダメージを受けない」、あるいは「(防御キャラクターへの)戦闘ダメージを無効とし~」といった効果を受けているキャラクターを「貫通」を所持したキャラクターで攻撃した場合や、相手プレイヤーへ「貫通」のダメージは発生しますか? A029.いいえ、発生しません。それらの場合、防御を行っているキャラクターはダメージを受けないため、「貫通」の条件である「戦闘ダメージを与える」を満たせないためです。 関連 第三弾 スターターデッキ紅 梅霖の妖精/15弾
https://w.atwiki.jp/supponpon/pages/68.html
,,.. -―- ..,,__ }'、 ,,. ''´ `´ヽ/__〉 / ',`ヽ / / / ヽ ヽ ∠、_ノ / / l } ', '、 {∠ノ / l /r=、lヽl/ } ヽ ヽノ/|ノ  ̄l /';弋r/ヽ'l /从/ | } { 从 l//`ヽ、 /l /-‐/ } l | ∧ ヽ,l / `''⌒/テヽ';/ l l ,. -、_ _,,..ゝ∧l ./ ヽ、 }ヽ、/l/ //'} /´ ヽ/`l''ーv' ´ /l/ l/ヽ、 `ヽ ´´ ,.ノ l/l/ 〈ヽ l ヘ l l〉〉 {\\ \_ ,,.. ィ´ | / } \ l ∧ l 〈 〈l l ヽ, ' ..,,_/\´ /l // // ヽ | ,/ } l 〉 ',、 ヽ`''ー// 〉ヽ、/ノ/´ . /_ノ ヽ ´ | l l lヽ`' / 〈 / `ヽ,_ l l ゞ '; / ヽ \ ヽ / 〈 / //l l `ヽ //''‐-、-、 l, / ヽ ∨´ / /// l | l`'''- ..,/`ヽ、ヽ,/ノ __,,.ゝ-\ ', </ { v /, ヽ / / `'' ..,,`v、''´ ー- -- `ヽ、_,,..ノ ` ´l /ノ/、 / l , ' ー----‐'''´ ̄ ̄`''ヽ ''´`ヽ /' / / ヽ. / l _、_ / / ,l_ノ ̄,____ `'l'ヽ`ヽ、 `ヽ// / `l. / ,l ,..,_ヽ{ l_ノ_ソ,'´ l;.;.;.;.;.;.;.;. ̄`'ー-、., ヽミ 〉 / ,. -'´';// {/ `ヽ、} || ||_|;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.`ヽ、{`ヽ /ヽヽ/ヽl / \ \ || |/|| |ヽ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.ヽ ''ヽ/___ ,/ / \{ ' ` \| ,'| l `ヽ__;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.} ,.. / / ヽ\ ヽ _ゝ-----、;.;.;.;.;.;.;`'''ー----t´ ヽ / / \ ヽ \/´ _ ヽ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;l ,,.. - '´ ̄ ̄`''----、 `ヽ `、 ,,./ /´ ヽ;.;.;.;.;.;.;.;. ,,.. ┴´ / `' ,.. }-‐'´, \ /l' / ',ー-- / ヘ / ,,.. '''´ ,,. -‐''´,,. -‐'''´; ; / / | l ヽ },.. '´ ヽ /,,. ''´ ,,.. -'´ ,,. -‐'´ ; ; ;; ; ; ; ; ; / / l/ ヽ l , _,,. 〉 /,,,. -‐''´,,.. -‐'´ ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; l / | ゞ /|l // / ; ; / /,,... -‐''´ ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; / / l | / |//,/; ; ; ;; / /________ ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; { | |{/; ; ; ;//_ノ ,. ' __ `ヽ、 ; ; ; ; ; ; | l | |; ;/_ノ´ / / l ヽ、 ; ; ; ; / __| | l;/ / / / | ヽ ; ; ; . / /; ; ; ; ;| l ヽ/ { | l ; ; ; / /; ; ; ; ; ; ; ;| | ̄ ̄`''ー-- ..,,, | | ; ; 香霖堂の店主。 博麗霊夢や霧雨魔理沙の知り合いでもある。